インボイス登録を強要された?!対処法を解説
ある日取引先から一通の封書が・・・「貴殿のインボイス登録番号をお知らせください」
絶景を独り占め・・・
取引先(課税事業者)も困っている
「貴殿のインボイス登録番号をお知らせください」
このような書面が取引先から送られてきた免税事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「消費税払いたくないな・・・でも仕事が減ったら困るな・・・」
と、同様に取引先も困っているのです。
取引先の側からみると、免税事業者との取引に係る消費税は、原則的に仕入税額控除の対象となりません。しばらくは、経過措置があり80%は控除できることとなっていますが、段階的に減額されていきます。
従前と同じ取引金額+10%消費税のままだと、取引先がその仕入税額控除の対象とならない消費税分、負担が増えることとなります。
まずは取引先と話し合ってみる
インボイス登録の有無を聞かれた場合、もし免税事業者のままでいたら今後どうなりますか?と、取引先に質問してみましょう。
①インボイス登録してほしい(課税事業者となってほしい)と言われたら
ざっくりと、今の自分の売上規模で、消費税の納税額を試算してみましょう。
小規模事業者については、インボイス制度開始後の3年間は「2割特例」を使うことができます。
ですが、「2割特例」を使うことが出来なくなった場合の試算も是非してみてください。
「2割特例」は時限的な制度で4年目以降はなくなります。結構4年はあっという間に経ちます。その時に慌てないように、今から認識しておくことが必要です。
消費税を試算した上で、課税事業者になるか、しばらくは様子見で免税事業者になるかを判断していただけたらと思います。
②消費税等相当額を段階的に取引価格から引き下げると言われたら
これは致し方ないのです・・・取引先にとっては、実際に控除できる分だけの消費税に変更しますよという通知です。
インボイス制度前は取引金額の10%分消費税を上乗せされて入金がありましたが、3年間は8%、4年目~6年目までは5%、7年目以降は0%と入金額が減額されてしまいます。
この場合も①と同様に課税事業者となった場合の消費税納税額を試算した上で、判断してください。
一方的な通知は法令違反
では、上記のような話し合いもできず、取引先から「免税事業者の場合は消費税の10%相当額を値引きします」「今後は取引をしません」など、一方的に通告を受けた場合はどうなるのでしょう。
通告の仕方によっては、その取引先は独占禁止法や下請法上問題となる場合があります。
以下のような通告や行為がある場合は、注意が必要です。
① 取引対価の引下げ
インボイス制度による消費税負担が増えることに伴い、取引上優越した地位のある事業者(買手)と免税事業者の双方納得の上で取引価格の設定は独占禁止法上、問題はないです。
ですが、交渉が形式的なもので、買手の都合のみで極端に低い価格設定をした場合は独占禁止法上問題があります。
② 商品・役務の成果物の受領拒否、返品
事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。
③ 協賛金等の負担の要請等
値引きの代わりに「協賛金」等の名目で金銭の負担を要請することも、優越的地位の濫用として問題となります。
④ 購入・利用強制
取引価格を据置く代わりに、別途商品を免税事業者に購入させるよう要請することも、優越的地位の濫用として問題となります。
⑤ 取引の停止
インボイス登録に応じない免税事業者との取引を停止する場合も、独占禁止法上問題となります。
⑥ 登録事業者となるような慫慂等
慫慂とはしきりに勧めることを意味します。免税事業者に対して、課税事業者になるように要請することは独占禁止法上問題とはなりません。
しかし要請だけではなく、課税事業者にならないと取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となります。
以上6点は公正取引委員会等「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」に明記されている問題行為です。
このような通知を行ってくる事業者とは、そもそも今後の取引を考えた方がいいかなと・・・
まとめ
課税事業者になるか免税事業者のままで行くのか、なかなか判断が難しいと思います。
仕事内容や取引先との関係性、今後のビジネスの展望も含め考えると、答えは千差万別です。
マイナス要因ばかり取りざたされているインボイス制度ですが、始まってしまったものは致し方ありません。嘆くばかりではなく、自分のビジネスプランを見つめ直すきっかけにしていただけたらと思います。